カテゴリ食べ物
言語日本語
投稿日2026年4月28日 14:44

ヒレステーキコース|母と過ごした贅沢ディナー

#ヒレステーキ コース#ステーキ ミディアムレア#韓国 ステーキ専門店
約 1 分の読書
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だいぶ前の夏のことなんですが、母と一緒に韓国・大田(テジョン)でステーキを食べに出かけたことがあります。普段は家の近くでごはんを済ませるし、わざわざステーキ専門店を探して行くなんてめったにないんですよね。でもあの日はなぜか無性に肉が食べたくなって、ちょうど母も時間が空いていたので二人で出かけました。韓国のステーキ専門店に行くと、肉だけがポンと出てくるんじゃなくて、スープ、サラダ、パンがコース仕立てでずらっと出てくるんです。アメリカやヨーロッパのステーキハウスとはちょっと構成が違います。あの日食べたものが今でも忘れられないのは、ヒレ肉が口の中でとろけたから――その話はゆっくりしていきますね。

店内の雰囲気

韓国・大田のステーキ専門店の店内、コンクリート壁の前に古いピアノが置かれ鍵盤の上にメニューが積まれている様子

店に入ると、古びたピアノが一台置いてありました。鍵盤の上にメニューが積み上げられているところを見ると、実際に弾いているわけではなさそうなんですが、コンクリートの壁と木の椅子の間にすっぽり収まっていて、インテリアとしてはなかなかいい味を出していました。窓から差し込む光がピアノの上を照らしていて、地元のステーキ屋さんでこんな雰囲気に出会えるとは思ってもみなかったんです。仕事帰りに焼肉屋にはよく行くけど、わざわざステーキ専門店に足を運ぶなんて日常じゃないですよね。だからこそ、こういうお店に座っているだけでちょっと特別な気分になれました。

テーブルセッティング

木製ハンドルのステーキナイフとフォークがマットの上にセットされ緑色のボトルに水が入っているテーブル

席に着くとこんな感じのセッティングでした。木製ハンドルのステーキナイフ、フォーク、スプーンがマットの上にきちんと並べられていて、お水は緑色のビール瓶に入れて出てきました。母が「これお酒?」って言うので注いでみたら、ただの水でした。どのテーブルにもこの瓶が置いてあったのでお店のスタイルなんでしょうね。こういうちょっとした演出が、雰囲気を作ってくれるんですよ。

コースの始まり――スープとパン

韓国ステーキ専門店のコース一品目のクリームスープにパセリと胡椒が振りかけられている様子

注文すると最初に出てくるのがスープです。韓国のステーキ専門店はだいたいこの順番で、スープから始まってメインまでコース形式で一品ずつ運ばれてくるのが基本構成なんですよね。この日出てきたのはクリームスープで、表面にパセリと胡椒が軽く振りかけられていて、中には細かく刻んだ具材が入っていました。量自体は多くないですが、メインの前に口を温める役割なのでこのくらいで十分です。

ラタンかごに入ったバゲット2切れにパセリが振られている様子

スープと一緒に出てきたパンです。ラタンのかごにバゲットが2切れ入っていて、上にパセリが少し振ってあり、バターが染み込んだ跡もありました。ただ、最近韓国のステーキ屋さんでよく出てくる中までしっとりしたガーリックバゲットのタイプではなくて、外はパリッとしているけど中はちょっとパサついた普通のバゲットでした。

バゲットをクリームスープに浸して食べる様子、スープがパンの先に付いている

でもこれをスープに浸して食べると話が変わるんですよ。バゲットのパリッとした表面にクリームスープが染み込んでいくと、パサつきが一気になくなります。韓国のステーキ屋さんでスープとパンが必ずセットで出てくるのはこういう理由なんです。別々に食べるとどっちもちょっと物足りないけど、合わせると抜群の組み合わせになります。

サーモンサラダ――母が独占した一皿

グリーンリーフの上にスモークサーモンがたっぷり乗ったサラダにクリームドレッシングとケッパーが添えられた様子

スープの次に出てきたのはサーモンサラダでした。韓国のステーキ専門店では、メインが出る前にこうやってサラダがコースに組み込まれていることが多いんです。グリーンリーフの上にスモークサーモンが5〜6枚たっぷり敷かれていて、あちこちにケッパーが散りばめられていました。ドレッシングはクリームベースで、サーモンのまろやかな味とうまく混ざり合いながらくどくならずにするすると食べられます。母はもともとお刺身が好きな人なので、これはほぼ一人で平らげる勢いでした。フォークでサーモンだけをちょいちょい摘まんでいるので「お野菜も食べてよ」と言ったら、「私はこれを食べに来たんだ」とのこと。

サーモンのクローズアップ

サーモンサラダのクローズアップ、スモークサーモンの繊維がはっきり見えオレンジ色に輝いている
サーモンサラダの接写、ケッパーが野菜の間に散りばめられている様子

近くで見るとサーモンの状態はかなり良かったです。繊維がくっきり見えて、色も均一なオレンジ色をしていて、一枚一枚が厚めにスライスされているので食べ応えがありました。野菜の合間にケッパーが隠れているのが見えるんですが、噛むたびにプチっと弾けて酸味が広がります。クリームドレッシングだけだと単調になりがちなところ、ケッパーがそのバランスを取ってくれる役割を果たしていました。

フォークでサーモンを一枚持ち上げた様子、ドレッシングが滴り落ちている
サーモンと野菜を一緒にフォークに乗せた様子

フォークでサーモンを一枚持ち上げると、野菜が一緒についてきてドレッシングがたらーっと滴り落ちました。こうやってサーモンで野菜を包むようにして一緒に食べるのが一番おいしかったんですが、サーモンの柔らかい食感と野菜のシャキシャキ感が一口で同時に味わえるんですよね。母はそんなことお構いなしにサーモンだけをせっせと抜き取って食べていましたけど。

サーロインステーキサラダ

サーロインを薄くスライスして野菜の上に乗せたステーキサラダに玉ねぎスライスが添えられている
ステーキサラダの近接撮影、肉の断面がミディアムに焼けピンク色が見える

サーモンサラダをほぼ食べ終えた頃に次の皿が運ばれてきました。今度はサーロインを表面だけ強火で焼いて中はピンク色のままの状態で薄くスライスし、野菜の上に乗せたステーキサラダです。上には玉ねぎのスライスがまばらに乗っていて、肉の表面にオレンジ色のスパイスの粒が見えたので、軽くシーズニングしてあるようでした。サーモンサラダに続いてこれが出てくるので、メインの前にもうお腹がけっこう膨れてきます。近くで見ると肉の断面がミディアムでちょうどいい焼き加減に仕上がっていて、外側は焦げ目のついた茶色、内側は赤みがかったピンク色。玉ねぎがやや多くて、肉より先に玉ねぎが口に入ってくるのはちょっと惜しかったです。

サーロイン一切れのクローズアップ

フォークに刺したサーロイン一切れ、外は茶色で中はピンク色のミディアムレア断面
皿に取り分けたサーロインステーキサラダ、肉2切れと野菜

フォークに一切れ刺して持ち上げると断面がはっきりわかります。外側はきれいな焦げ目がついた茶色で、内側は鮮やかなピンク色。ミディアムレアに近い仕上がりです。お皿に取り分けてみると肉2切れに玉ねぎと野菜が少し――コースの途中なのでこのくらいの量がちょうどいいですね。

メイン――ヒレステーキ登場

韓国ステーキ専門店のメインのヒレステーキ、皿の中央に分厚いヒレ肉が置かれデミグラスソースとローストにんにくが添えられている

ついにメインが来ました。ヒレステーキです。お皿の真ん中にどっしりと厚いヒレ肉が鎮座していて、その横に茶色いソースが半円を描くようにかけられていました。ソースの端のほうにローストした丸ごとにんにくが2〜3粒くっついていて、反対側には粗塩と胡椒が振られています。ヒレは牛の腰の内側にある部位で、脂肪がほとんどなく柔らかいのが特徴です。ステーキの部位の中でも最も柔らかい部位なので、ナイフがほとんどいらないくらいすっと切れるんですよ。

ヒレ肉のディテール

ヒレステーキを真上から見た様子、グリルマークと胡椒の粒が見える
ヒレステーキの側面、厚さが指2関節分ほどあり側面にツヤがにじんでいる
ヒレステーキの超接写、シアリングされた表面の割れ目から肉汁がにじんでいる

真上から見ると表面にグリルの跡がくっきりと刻まれていて、胡椒の粒があちこちに食い込んでいるのが見えます。横から見ると厚さは指2関節分くらいはありそうで、ヒレ特有の丸くて引き締まった形がしっかり保たれていました。側面から脂がじんわりにじみ出てツヤが流れているのが見えて、ぐっと寄って撮ると表面がどれだけしっかりシアリングされているかがわかります。焼き目の割れ目から肉汁が滲んでいたんです。ソースは濃い茶色のデミグラス系で、横に置かれたローストにんにくはソースに半分ほど浸かってテラテラと光っていました。

サイド――グリル野菜

ヒレステーキのサイドのグリル野菜、ズッキーニ・玉ねぎ・きのこ・唐辛子が小皿に盛られている

ステーキの横にサイドが別で出てきたんですが、同じ皿に盛り合わせではなく小皿で別添えでした。中にはズッキーニ、玉ねぎ、きのこ、赤い唐辛子がグリルされて入っています。油で炒めたようですが味付けはほとんどされておらず、胡椒が軽く振ってある程度。韓国式の焼肉屋だったら副菜(パンチャン)が10種類は並ぶところですが、ステーキ屋さんではこれが全部です。母はこれを見て「おかずこれだけ?」という顔をしていましたが、洋食ってもともとこういうものなので仕方ありません。ただ、肉ばかり食べ続けていると口の中が重たくなる瞬間がやってくるんですが、そのときにこれをひとつずつ摘まむとなかなかいい仕事をしてくれました。

ヒレ肉を切ってみる

ヒレステーキにナイフを入れる直前の様子

さあ、いよいよ切ってみます。

ヒレステーキの断面、中心が鮮やかなピンク色で外側が茶色のグラデーションのミディアムレア状態
ヒレステーキをもう一切れ切り分けた様子、内側に肉汁が溜まりソースと混ざっている

ナイフを入れた瞬間、ほとんど力がいりませんでした。ヒレはもともと柔らかい部位ではあるんですが、ここまでくるとナイフがスーッと吸い込まれるように入っていくレベルです。断面を見ると中心が鮮やかなピンク色で、外側にいくにつれて茶色にグラデーションがかかっていて、ミディアムレアとしてぴったりの仕上がり。もう一切れ切ってみると、内側に肉汁が溜まっているのが見えて、皿の上でソースと混ざりながらじわーっと広がっていきます。母は中が赤いのを見て「これ生焼けじゃないの」と言いましたが、一口食べてみてくださいと勧めたら、半信半疑でフォークを手に取りました。

ソースにたっぷり浸けて一切れ

切り分けたヒレ肉をデミグラスソースにたっぷり浸けて持ち上げた様子、ソースが肉の表面を伝って滴っている

一切れ切ってソースにたっぷり浸けて持ち上げました。デミグラスソースが肉の表面を伝ってつーっと垂れていくんですが、口に入れると肉のあっさりした旨味とソースのコク深い甘みが同時に押し寄せてきます。ヒレは脂肪が少ない分、ともすると淡泊になりがちなんですが、このソースがそこをぴたりと補ってくれていました。

味――噛む前にほどける肉

口に入れると噛む前に肉がほろほろとほどけていきます。ナイフで切るときから感じていたんですが、舌の上に乗せたら力を入れる必要もなく、そのままふわっと崩れていく食感でした。ソースを付けずに粗塩だけをちょっと付けて食べると肉本来の味がくっきり立ち上がってきて、ソースを付ければ甘味と旨味が層になって重なっていく。私は交互に楽しみながら食べました。仕事帰りに焼肉屋には気軽に行けても、こうやってステーキをちゃんと食べようと思ったらわざわざ時間を作って出かけなきゃいけないじゃないですか。だからこういう機会が巡ってくるたびに、じんわり大事に感じるんですよね。

正直な不満――量が少ない

この食事で一番大きく残った不満は、量です。コースの構成はスープ、サラダ2種類、サイド、メインと、パッと見けっこう充実して見えるじゃないですか。でも肝心のメインであるヒレ肉自体は150グラムにも満たない量なので、食べ終わると物足りなさが残ります。コースを順に食べてくる中でそこそこお腹は膨れるんですが、それはパンやサラダで膨れたのであって肉で満たされたわけじゃないんですよね。肉好きの立場からすると、メインが終わったのに肉が足りないというあの感覚がけっこう長く尾を引きました。

韓国の牛肉価格――なぜこんなに高いのか

韓国でこのレベルのヒレステーキを食べようと思ったら、約3,500円〜4,500円(3万〜4万ウォン)は覚悟が必要です。

オーストラリアでは同等クラスのヒレが約2,500円前後で食べられますし、アメリカでも韓国よりは明らかに安く済みます。

韓国は日本と並んで、牛肉の価格が世界的にもトップクラスに高い国なんです。

韓国産の韓牛(ハヌ)は輸入牛の3〜4倍の価格ですし、輸入牛を使ったとしても関税や流通コストが上乗せされるので現地価格よりかなり割高になります。その代わり、高いだけあって味は間違いありません。韓牛はサシ(霜降り)がきめ細かく入っているので、焼き加減さえ押さえれば肉汁が弾けますし、輸入牛であっても韓国のシェフの手にかかればまず外れることはありません。韓国で食べる牛肉は確かに高い、でもその値段に見合う国だというのが正直な実感です。

レアとミディアムレア――好みが分かれる世界

私はレアもミディアムレアもいける口なんですが、ここは好みがはっきり分かれるところです。韓国の人でも中が赤い肉は無理という方がけっこういるんですよね。母もまさにそのタイプだったんですが、この日は一切れ食べた後、無言でフォークを動かし続けていました。妻は牛肉を食べない人なので、一緒にステーキを食べに行く機会がありません。この味を分かち合えないのがいつも残念なんですが、だからこそ母と出かけたこの日のことが余計に記憶に残っている気がします。

帰り道

家に帰る車の中で、母がぽつりと一言こう言いました。「また連れてきてね。」私は笑いながらわかったよと答えたんですが、次は妻も口説いて一緒に来てみようかなとも思っています。牛肉を食べないからなかなか難しそうではあるんですけどね。

投稿日 2026年4月28日 14:46
更新日 2026年4月28日 14:50