
煮込むほど旨い餃子鍋|韓国式マンドゥジョンゴル
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冬になると恋しくなる韓国の鍋料理、マンドゥジョンゴル
去年の冬のことなんですけど、韓国料理の中で寒くなると自動的に食べたくなるものがひとつあるんです。マンドゥジョンゴル。大きな鍋に出汁をぐらぐら沸かしながら、餃子やきのこ、野菜、お肉を一気に入れてぐつぐつ煮込む料理なんですが、こうやって鍋ごと煮て取り分けて食べる料理を韓国ではジョンゴル(전골)と呼びます。最初は「ただ鍋にあれこれ入れただけじゃない?」と思うんですけど、一口食べたら韓国の人たちがなぜこれをこんなに愛しているのか、すぐにわかります。出汁に餃子の肉汁が溶け出して、スープの味がどんどん深くなっていくのがこの料理の真髄なんです。
子どもの頃から冬になると家でもマンドゥジョンゴルを作って食べていたんですが、外で食べるのはまた別物なんですよね。この日は友達と韓国・大田(テジョン)にあるマンドゥジョンゴルのお店に行ったんですが、そのお店は今はもう閉店しています。ただ、マンドゥジョンゴル自体は韓国全国どこでも気軽に見つけられる定番の冬グルメなので、お店の話よりもマンドゥジョンゴルという料理そのものについてお話ししますね。マンドゥジョンゴルは韓国料理店の中でもジョンゴル専門店やマンドゥ(韓国式餃子)スープの専門店で出しているメニューです。軽食店や定食屋にはあまり置いてなくて、メニューに「ジョンゴル」が独立してあるお店を探す必要があります。
マンドゥジョンゴルはこんな見た目

マンドゥジョンゴルはこういう見た目の料理です。広くて浅いジョンゴル専用の鍋に醤油ベースの出汁を張って、その上にありとあらゆる具材をぐるっと並べて出てくるスタイル。お店によって入る具材や出汁の味は少しずつ違います。真ん中には手作り餃子が3〜4個どっしり座っていて、皮の隙間から緑色が透けて見えています。その周りには大きめに切った白い豆腐、えのき、にんじん、長ねぎ、青唐辛子まで隙間なくびっしり詰まっていて、全部取り出したら鍋がスカスカになりそうなくらい。上にこんもり乗っている緑の葉っぱは春菊で、香りの強い葉野菜です。この状態ではまだ火をつけていません。テーブルのガスコンロに火をつけると出汁がぐらぐら沸き始めて、すべての具材が一気に煮えていくんです。
餃子の皮がこんなに薄い


餃子にぐっと寄って撮ってみました。皮が紙みたいに薄くて、中の具材の色がそのまま透けて見えるんです。鮮やかな緑を見ると、ニラがたっぷり入っている様子。2枚目はもう1個をさらに近づけて撮ったもので、皮一枚がすべて。出汁に半分浸かっていて、表面にツヤがつーっと流れていました。
火を入れて煮込み開始 — 牛肉が隠れていた

煮え始めたら、さっきとはまるで別の鍋になりました。出汁がぶくぶく湧き上がりながら具材が混ざり合い、餃子の皮が出汁を吸ってさっきよりぷっくり膨らんでいます。で、ここで目を引いたのが、餃子の間に牛肉が入っていたこと。一緒に行った友達が蓋を開けた途端「ここ、お肉も入れてくれるんだ?」って驚いてました。火が通って赤みが抜けた肉が出汁と一緒に溶け込んで、スープの色がぐっと濃くなったのが写真でもわかると思います。普通のマンドゥジョンゴル店は具材をひと通り煮てからお肉を別で入れるところが多いんですが、ここは最初から牛肉を野菜と一緒に敷いてあったんですよね。だから煮込んでいる間ずっと肉の旨味が出汁に染み出し続けるわけです。えのきはしんなりしてくたっと垂れ下がり、春菊もさっきのシャキッとした姿はどこへやら、スープの中に沈んでいる状態。豆腐の角がうっすら茶色に染まっていたんですが、それだけ出汁が濃いということです。
煮込むほど変わるスープの味


しばらく煮込んだあとです。お玉が入っているのを見ればわかると思いますが、このあたりでそろそろ食べ始めるタイミング。さっき最初に出てきたときとスープの色がまるっきり変わっています。牛肉の旨味と餃子の中身から出たものが全部溶け込んで、スープにとろみがついて濃厚に。左側にキムチの小皿がちらっと見えていて、右端には別に頼んだケランチム(韓国式茶碗蒸し)の器もかかっています。クローズアップの写真を見ると、ズッキーニやにんじんがじっくり煮えて色がワントーン濃くなっているのがわかります。マンドゥジョンゴルの良さってまさにここなんです。最初のひとさじと途中のひとさじで味が違う。同じ鍋なのに、時間が経つにつれてずっと違うスープを飲んでいるような感覚なんですよ。
餃子が破れた — でもそれが悪いとは限らない

餃子が破れました。煮込んでいるとこうなるんです。お玉で引き上げたら皮がびりっと裂けて、中の具材がスープの上にどばっとこぼれ出してしまいました。友達が「引き上げよう」って言ったときにすぐやっていれば良かったのに、写真を撮っていて遅れたんですよね。正直ちょっと悔しい。でも破れた餃子が悪いことばかりでもなくて、中身が出汁に溶け出すことでスープの味がさらに深くなるんです。鍋の中を見ると、ズッキーニ、にんじん、えのき、椎茸、お餅が全部くたくたに煮えてぐちゃっと混ざり合っていて、湯気がもわもわ立ち上っているのが伝わるでしょう。奥に空のお椀が見えますが、あそこに具材を取り分けて食べるんです。
長く煮込んだマンドゥジョンゴルの本当の姿

さらに煮込んだら鍋の中がすごいことになりました。最初のあのきれいに整った見た目は跡形もなし。スープは澄んだ醤油色からとろみのある褐色に変わっていて、餃子は何個かまだ形を保っていますが、残りは破れて中身が全部溶け出した状態です。表面に唐辛子の粉が浮いていてほんのりピリ辛の気配も漂い、長ねぎや春菊の茎があちこちに絡まっています。見た目はちょっとカオスですけど、味は最初のひとさじとは比べものにならないレベルです。
マンドゥジョンゴルの食べ方 — 小鉢に取り分けて

鍋から直接すくって食べたら口の中を火傷します。マンドゥジョンゴルの食べ方はシンプル。こうやって小鉢にお玉で具材とスープを取り分けて食べるだけです。中には餃子がひとつと豆腐ひと切れ、長ねぎがスープに浸かっていて、スープの色が濃い褐色で唐辛子の粉が浮いていて見るからにピリ辛。ひと椀取り分けてフーフーしながら食べて、空になったらまた取り分けて、この繰り返しがジョンゴルの食べ方です。
牛肉はタイミングがすべて

牛肉は引き上げるタイミングが命です。煮込みすぎると硬くなります。箸でつまみ上げた一切れですが、このくらいの褐色のときにさっと引き上げないと柔らかさが失われます。お肉は鍋に入れっぱなしにするとどんどん火が通っていくので、スープに旨味を出す役割と、実際に食べる分の役割を分けて考える必要があるんです。食べる分はさっさと引き上げて、残りは出汁要員として鍋に残す。これがコツです。
マンドゥジョンゴルの値段 — 2人で約2,800円
この日2人でマンドゥジョンゴル1つ+ごはん=約24,000ウォン(約2,800円)
マンドゥジョンゴルは基本2人前で出てきます。鍋料理としては安い方ではないですが、鍋いっぱいの具材の量を考えると納得できるお値段です。
食べ終えて — 正直な感想
マンドゥジョンゴルは食べている間ずっと味が変わり続ける料理です。最初は澄んでいた出汁が、煮込むほどに餃子の中身や牛肉の旨味が溶け出してどんどん濃くなっていく。その変化を眺めながら食べる楽しさがあります。でもひとつ残念なのは、餃子が思ったより簡単に破れること。ちょっとタイミングを逃すと中身が全部出てしまうんですが、それがまたスープの味を引き上げてくれるから文句も言えない。牛肉もさっさと引き上げないと硬くなるんですけど、食べてるうちに忘れてそのまま放置しちゃうんですよね。
普通マンドゥジョンゴルは最後にカルグクス(韓国式手打ちうどん)を入れて、あの濃厚なスープで麺を煮込んで〆るんですが、この日は頼みませんでした。もうお腹がパンパンだったので。友達は帰りがけに「次はカルグクスまでやらないとね」って言ってたんですけど、正直こっちもそのことしか頭になかったです。